最近は彼氏と喧嘩をした。彼は不治の精神病……躁鬱を患っていて、私が病気の彼を信じられずに挑発してしまったのだ。病気ならいつかは私を裏切るだろう。私の想像を超えるとんでもないことをやらかすはずだと。

調べた所、双極性障害は脳の疾患で心の病ではない。れっきとした臓器の病なのだ。発症の原因に心的なトラウマがあることが多いようだけど、この病気の場合人格障害とは違って完治は望めない。発達障害統合失調症などと同じで遺伝的要素が非常に強い。

双極性障害の恋人や結婚相手を支える人の体験談は悲惨なものばかりだ。100万単位の借金が発覚した、いきなり高級車を買ってきた、何の前触れもなく海外旅行に飛び出した、パチンコに通い詰めて金がない、鬱が激しくて仕事を辞めて無職になってしまい家計が回らない…など。 双極性障害の一番の問題は理性が弱まるために正常な判断が困難になり、言動が粗暴になり、普通ならやらかさないような事を平然と行うようになり、金銭感覚がおかしくなる所だ。 今の所温厚で無害そうな彼氏だっていつ豹変してしまうか分からない。心の問題ではなく脳の問題だから、彼だってそうなりたくないと思っていてもコントロールしきれない事もあるだろう。

彼が双極性障害だと知っていて好きになったはずなのに、いざその症状を目の当たりにした瞬間ドン引きしてしまった。多少ウキウキする程度の軽躁だったのだが、それでも「好きな人が壊れた脳に操られている」という異常な状況がすごく悲しく思えた。泣きながら思い詰めた。結局のところ私は普段の波のない彼しか好きじゃなくて、病的な面までは受け入れきることができなかった。相手の欠点を愛さなければそれは真の愛ではないと誰かが言っていた気がするけど、病気ばかりは愛だけでどうこうできる問題ではないし、下手したらお互い堕ちる所まで堕ちる。

そう思った経緯を全て彼に伝えた。好きになっておいて「あなたの病気に付き合うことはできない」と突き放すような事を言うのはあまりにも自己中が過ぎるが、本心を誤魔化して付き合っていても必ずボロが出る。付き合いが長くなればなるほど彼の私への期待は大きくなるだろうし、そうなってから「病気の貴方を受け入れられない」と告げるのは残酷すぎる。なら早い段階で手を打ってしまった方がいいと考えた。どの道傷つける羽目になるなら軽い方がいい。

 

案の定彼はひどく悲しみ、怒った。「俺は君の全てを受け入れているのに、君は俺の良い所しか見ようとしないのか」と。私は彼に全て受け入れてくれと頼んだ覚えはないし、欠点も嫌なところもあるなら言ってくれと日頃から伝えているはずだ。私は攻撃的で神経質なところはあるにしても彼ほど予測不能で不安定というわけではないのだから、受け入れることはできなくはないだろう。

そもそも、彼の場合自分の全てを受け入れて欲しいから相手を受け入れている、というのが正しい気がする。そんな重苦しい見返りを期待されても困る。受け入れるにも限度というものがあって、彼が抱える疾患は受け入れるにはあまりにも重すぎる。

喧嘩の後、彼の軽躁も多分1日で終わった。彼は落ち着いた後、そのスタンスでも構わないと言ってくれた。辛い思いをさせてしまったなと思うが、相容れない所にはハッキリ線を引いた方が無難だ。

彼は生きるのに精一杯で、過去のトラウマや治らない病気に振り回されて崖っ淵まで追い詰められていた。これはただの推測だが、彼はきっと一緒に心中してくれるような、堕ちる所まで堕ちてくれる人を深層心理では望んでいたのではないかと思う。誰かに終わらせてほしかったのかもしれない。

でも私にはそれはできない。私は堕ちたくはない。私は生きていたい。私は健康で楽しくて幸せで前向きな人生を送りたい。そしてそれは精神科医やカウンセラー、彼自身が向き合うべき問題であって、私が手助けできる範囲を遥かに超えている。他人に促されて仕方なく治そうとするのでなく、彼が自ら這い上がる気にならなければどうしようもない。

確かに世の中は本当に生きづらい。特に彼のような繊細で心の綺麗な人ほど早く深く病んでいくだろう。良い人ほど早く死ぬと言うのはそういう所から来ているのかもしれない。この先生きていて良いことがあるのか?生きる意味があるのか?いっそ死んだ方がいいんじゃないか?と考えたくなる気持ちも分からなくはない。でもそれを考え始めたら本当に終わりなんだよ。生きる意味なんて最初からない。自分で考えて作っていくしかない。

もしかしたら彼は私と別れた方が良いのかもしれない。このまま私といたらもっと悪化してしまいそうな気がする。しかし、別れたら別れたで何をしでかすか全く予想がつかないというのもある。彼の精神面のバランスからしても最悪のケースだってあり得なくはない。ちなみに躁鬱病の自殺率は非常に高い。

彼が躁鬱の因子を持たないまま出会えていれば良かったのにと強く思う。でもそれはきっと今の彼とはもっと違う彼になっていたかもしれないな、と考えると非常に複雑な気持ちになる。

こんな事ばかり書いているけど、私が彼に抱く気持ちは紛れもなく本物だ。本当に好きだ。本当に愛している。だからこそ受け入れられないことが多くて、本当に辛くて葛藤してしまう。彼の病気を恐れる理性と、彼を愛する気持ちの板挟みになっていて、この矛盾がとても辛くてたまらない。

 

付き合っていけるのかどうかちょっと不安ではありますが、ぼちぼち気楽にやってこうと思います。